様々な融資制度を検討する①
2021/09/01
様々な融資制度を検討する①
融資調達の基本
戸建てであれテナントであれ、開業には多額の資金が必要だ。これを自己資金だけで賄うのは非常に難しく、通常の場合、不足資金を金融機関から調達することになる。
⑴担保価値
金融機関から資金を調達する場合、担保の提供を求められるのが一般的だ。担保については、本人名義ではなく、親族名義でもよいケースもある。
注意すべきなのは、担保評価が金融機関によってまちまちであることだ。
担保価値は土地の形状によっても変動するため、事前にきちんと確認しておかなければならない。
土地の場合だと通常は時価の70%が目安になる。なお担保として認められるのは土地だけではない。国債や上場企業の株式も担保になり得る。
担保が不足する場合、信用保証協会の保証を取り付けるやり方がある。
⑵利益と返済期間
同じ金利であっても5年で返済する場合と10年で返済する場合とでは毎月の返済金額が変わってくるため資金繰りに大きな差が生じる。当然返済期間が短ければ、負担は大きくなる。返済期間が長ければ利息の総支払額は大きくなるが、利息は経費計上できるという利点がある。なお元金の返済については経費には含まれない。したがって一般的には利息よりも借入の返済期間を重視するのが基本だ。
⑶元金返済据え置き期間
通常の診療所の場合、実際の収入の大部分は診療報酬であり、診療報酬は請求の2ヵ月後に支払われることになっている。
その間はわずかな窓口収入しかない。さらに開業直後は患者数も少なく、経営も赤字であるのが一般的だ。
尾のような状態で金融機関への返済が始まてしまうのは厳しい。そのため、診療所の場合は、最低1年以上の元金据え置き期間が欲しい。
⑷公的資金の活用
資金調達については、上記のポイントを押さえたうえで、低い金利のものからできるだけ多額に借りるのが基本。
そのためには、当然、各金融機関の融資の特徴をチェックしておかなければならない。特に、国民生活金融公庫や独立行政法人福祉公共団体が実施している制度融資については返済期間が長く金利面でも有利である場合が多いので、きちんと確認したい。
⑸第三者の保証人
金融機関は通常、生命保険の受取人である配偶者を保証人として要求する。配偶者の場合はよいが、第三者の連帯保証人を要求されると、資金調達に支障が生じる可能性がある。兄弟や親族が快く引き受けてくれる場合はよいが、血縁関係があっても難色を示されるケースは少なくないからだ。
なお、保証人を依頼する際にはたとえ近親者であっても、事業計画書を示して収支見込などをきちんと説明すべきなのは言うまでもない。
⑹親族から借入
開業資金については、金融機関からだけではなく、親族等からの借り入れも考えられる。このような借り入れについては、利子を設定していない場合などは贈与とみなれて贈与税が課税される場合もある。したがってきちんとした借用書を作成し、返済能力にあった返済条件を明記しておく必要がある。金融機関の口座からの自動引き落としなどを利用して、返済の事実を第三者に具体的に説明できるはっきりとした証拠を残すことも大切だ。
あまり低い金利で借入すると、通常の市中金利との差額について経済的利益をうけたと判断され、贈与税が課税されることもあるので注意する。